あたしの執事
それからというもの、今日1日上の空。授業はほとんど聞かずに、帰りを待っていた。


「千秋?帰るよ」


机まで来た玲がひょこっと顔を出す。あたしの目は虚ろで、頭の中は空っぽ。

リムジンに乗ったかどうかさえも覚えていないまま、家に着く。


「なんか千秋変じゃね?」


玲のずば抜けた言葉にびくっと肩を震わせる。

そして隠してても意味がないと思い、口を開いた。


「玲、司さんに今日会ったんだ」

「ああ、司?かっこよかったでしょ。俺には負けるけど」

「…そうじゃないよね、もっと他に言うことない?」


玲が目を見開き、表情も険しくなる。


「…何か…聞いたの?」

「ううん。聞いてない。だから今、玲に聞いてるんでしょ?」


玲が悲しそうに笑う。それが、いつもの玲とは考えられない程に切なかった。
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