あたしの執事
芽衣さんが玲のカルテをそっとあたしに差し出すと同時に、口を動かす。あたしは、顔を前に出し、覗き込んだ。


「この部分から移植を行おうと思っています。上手くいけば玲の病状の進行を止められ、これ以上の悪化も防げます」


芽衣さんは指でカルテをなぞりながら、丁寧に教えてくれる。


「つまり、病気が治るんですね」


あたしは、それに相槌を打つかのように頷いた。


「はい。ですが、その分のリスクも大きいです。お分かり頂けますね?」


『病気が治る』

ということは、不治ではないということになる。

あたしの胸の中には、安心で満たされつつあった。


「移植の話は…もう玲にされたんですか?」


深刻そうな芽衣さんに、対し浮かれ気味のあたしは陽気に尋ねた。
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