あたしの執事
あたしはブレザーをきれいにたたみ、手に持った。


「なんで上着ねーんだよ」

「ご飯落としたら汚れるでしょ?それが嫌だから着ないの」


以前、前の家に住んでいた時皿ごと食事をひっくり返すという、なんとも恥ずかしい失態から、服には十分気遣うようになった。


「珍しいな、お前がそこまでするの」

「どういう意味よ。それ」


如月は手首を鳴らしながらそう言った。本当にコイツは、あたしのことを主人だと思っているのだろうか?


「ほら、飯」


スッと皿を差し出す。さすが金持ちだ。

毎日こんな豪勢なものを与えられたら、あたしは将来きっとブクブクに太ってしまっているだろう。


「こんなの食べたことないよ」

「俺が作ったんだ。まずいなんてほざいたらブッ殺すからな」


自信満々にそう言う目の前の男。


「いただきます」
< 21 / 134 >

この作品をシェア

pagetop