あたしの執事
グッと腕を引っ張られ連れて来られたのは、学校の資料室。


「…何があったのですか?」


如月があたしの顔を覗き込む。あたしは自分の唇を小さく噛みながら、言った。


「アンタはさ…いいよね。社会勉強とかそんな悠長なこと言ってられてさ。こっちはこっちなりに、結構つらいんだよ」

「先ほどの会話を聞いてらしたのですか…」

「唯一の親と離れてさ、それでも笑ってきたんだよ。つらくても、意味の分からない二重人格執事をつけられても、我慢してたんだよ。それなのに…」


いつのまにか頬に暖かい涙が伝っていた。


「それなのに…利用されてたなんか聞いたら、ギリギリの所で保ってたあたしの気持ち、どうなんのよぉ…」


如月はただ黙っていた。あたしは泣きながら如月の腕を押す。


「アンタはほんっとに最低だよね…もう…いいよ。あたしに今後一切、構わないで」


ひどく泣き腫らした顔のまま、あたしは飛び出した。


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