あたしの執事
その瞬間ドンッという鈍い音がする。


「千秋様!」

「…っててぇ…」


あたしの目の前にいる、見知らぬ男はそのまま立ち上がる。


「すみません。前方不注意でした。お怪我はありませんでしたか?お嬢様」


『お嬢様』

あたしの執事でさえ言わないそのフレーズに、心が馬鹿みたいに躍る。


「い、いえ…こちらこ…」

「…?何か?」

「かっこいぃー…」


思わず出てしまった言葉を、慌てて閉じ込める。相手の男は、首を傾げてる。


「あっすいません。今言ったことは忘れてください」

「面白いお方ですね。それでは失礼致します」


すっかり涙の存在を忘れていたあたしは、名前ぐらい聞けば良かったと落ち込んだ。


「超タイプぅ…」
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