あたしの執事
まだ、こんなにもお母さんとの生活が胸に焼き付いていて…

慣れたはずの、執事つきの生活が苦しくなってきて…


「千秋?」


ほらまた…あなたがあたしの名前を呼ぶことで、痛みがどんどん広がっていくんだよ。


「何泣いてんの」


如月がそっとあたしの頭を撫でる。


「この服で…よくお母さんと出かけたの…思い出しちゃって」


泣きながらなので、上手くロレツが回らない。でもどんな言葉でも、如月はきちんと受け止めてくれた。


「千秋のその服のかわりになる服、俺が買ってやるよ」

「え…」

「そしたら千秋は俺のこと思い出して、泣いてくれんだろ?」

「…」


彼なりの優しさが、伝わってくる。それがすごく暖かくて、思わず頷いてしまった。
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