あたしの執事
ショッピングセンターの中で買い物を済ませ、軽い食事に至る今。

久しぶりの誰もいない昼食。お母さんと一緒に生活していたときは、これが当たり前だった。


「結構あの生活に充実しちゃってんのかな…あたし」


如月と出会って色々な事が変わった。

キスは愚か、恋愛経験なんて全くなかったあたしの繊細な神経に、アイツはありとあらゆる知識をばら撒いていく。


「…さて、そろそろ行くか」


ロンドンやパリなどでは、1人の女性は様になるが、日本でそんなことを言えばただの言い訳になるだけ。

虚しい1人の女など、お呼びじゃないのよとでも言ってるかのような、そんな目でで見られる。


「千秋」


あたしの複雑な心とは裏腹な、穏やかな声。

身近な人で、あたしの名前を当たり前のように呼び捨てる人なんか、決まってる。


「何よ。来ないでって言ったでしょ?如月」

「執事は主と交わした約束は、絶対破りません。ですので…どうぞ」
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