君にティアラ
まさか、そんな理由だとは思わなかった。

赤い顔のまま健吾が小さく鼻をすすった。


「町田果穂さん」


名前を呼ばれた。

あたしを真っ直ぐ見る健吾の強い眼差し。

心臓バクバク、うるさい。


「あんたが好きだ」


店内でかかってる筈の有線なんて、どっかに取っ払った二人の世界で。

よく通る声で大宮健吾が。


そう、言った――


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