『サヨナラの向こうにあるもの』
第三章「罰」
ライブが終わり、打ち上げの席で私は冬弓のそばに急いだ。


私のどこにこんな想いが潜んでいたのか、冬弓に怖い程ひかれて行く私がいる。



一緒に仕事が出来る事に興奮している様子の優二の目は、生き生きと正面を向いている。


私の危険な想いなど、きっと考えもしないだろう。




「来てくれて良かったよ。
聞かせたかったんだ。
新曲も出たし。

後で紹介するから。」



そんな話をしたのは、ほんの数時間前。


なのに、私は冬弓に、強くひかれ、テーブルの隅から離れられずにいた。



「お疲れ様でした。 
乾杯」


優二のリードで更に賑やかさが増している。


さりげなく冬弓の隣に座りジントニックを飲んでいると、優二が



「冬弓さん、僕の彼女。」


と私の背中を押した。



なんて紹介の仕方だろう。


「そうなの?」


冬弓の瞳が私を見つめている間のほんのわずかな瞬間に、テーブルの下で 冬弓が私の手を握った。



誰にも気付かれないように。



優二に気付かれないように。

< 7 / 24 >

この作品をシェア

pagetop