『サヨナラの向こうにあるもの』
優二が


「今日は飲むよ。
冬弓さん、場所変えますか?」


冬弓は身じろぎもせず


「いいよ、ここで。」

と、優二の言葉をさえぎった。



冬弓の言葉は絶対と思われ、強く握り直された私達の指の隙間は、痛い程に狭められた。


冬弓と私は不自然な程 言葉を交さず、並んでグラスをかたむけ、その私の隣に優二がいる。



これから何が起きるの。



優二がほろ酔いで私の顔を覗きこんでいる。



優二の知ってる私は、22歳でメルローズのシャツでクシュカのクロス。



でもね優二、本当の私はうそつきなんだよ。





饒舌な人々がそれぞれに語り、訴え、知ったかぶりをする。


誰もが抱え込んでいる不安や妬みは、見て見ぬふりをする。



優二が見ている今は、いつか私に罰を与えて、苦しみ哀しみをもたらすかもしれない。


だけど引き返せないこの時間を、優二に委ねる事はない…

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