あれから。
あれから。
「兄貴。」
「なんですか?シェイド。」
並んだ背の低い方が呼びかけた。
どうやら兄弟らしい。
兄と呼ばれた方は仮面で顔を覆って、頭の天辺で割れた帽子を被り、路上でたまにみかける道化師(ピエロ)の風貌そのものだ。
弟らしきシェイドは、長い銀髪に灰色の瞳、右目は眼帯を装備し、黒い衣装を纏っている。
「僕外に出たいよ。」
「なりません。マスターに言われているでしょう?お前は外に出てはいけませんと。」
「でも行きたい!」
ふんっと鼻をならし、そっぽを向いてしまった。
これは彼が兄に頼み事をする時の癖だった。
主人に言われていても、彼にはどうしても確かめたい、確かめなくてはならない事があったのだ。
「シェイド?何を隠しているんです?どうして外に出たいのですか?この兄に話してみなさい。」
「やだよ。兄貴には関係ない。」
「そんな事を言う子を外には出せません。部屋で寝ていなさい。」
「やだ。出してくれるまで仕事しないから。」
またそっぽを向いてしまった。