あれから。
しばらく経った日。

兄はシェイドを連れて、いつかの街に来ていた。




「シェイド、あなたの言っていたお友達のお友達のお家は本当に此処ですか?」

「うん。」

「ま、入ってみましょうかねぇ?」




みようによっては主に夜客の入るホテルだが、古い城。
何度か立て替えたであろう跡が少しだけ残っていた。

兄がまず入ってみると、門のところで引き止められた。




「そこ勝手に入ったら駄目ですよ?そっち薔薇園なんで、薔薇の棘が刺さりますから。」




黒髪の青年だった。

いや、よく見れば濃い赤の髪にも見える。
瞳はガーネットのような輝きで、白い肌に黒いYシャツを着ている。




「はぁ、あのぅ…こちらの方ですか?」

「そうと言えばそうなんですけどね。違うと言えば違います。なんだ、セディーに用事ですか?」

「いえ、よくわかりませんが…弟がですね、こちらの方のお友達と会いたいと言うのですが、家に行ってみたらいなかったのでこちらに伺いに…こちらによくいらっしゃっていると伺ったそうで。」

「はぁ、そうですか。ま、どうぞ。お茶くらい出しますんで。此処の人は中です。」

「あ、すみませんね、ほんとに。」




青年に続いて古い城の中に入っていった。

中は想像以上に広く、綺麗だった。
廊下には見事な薔薇が5m置きに飾られ、花瓶も細部に至るまで磨かれている。
掃除もいきわたっていて、毎日この広さをここまで掃除するなら、きっと業者に頼んでいるのだろうと勝手に思ってみたりもした。

くだらない事を考えているうちに、どうやら到着したようだ。
< 3 / 9 >

この作品をシェア

pagetop