あれから。
「ちょっとここで待っていて下さい。呼んできます。」
紅茶と茶菓子を置いて青年は部屋を出て行ってしまった。
兄は紅茶を一口啜り、香りを楽しむように鼻息を荒くした。
「これは良いお茶ですねぇ~!香りも良い!ややっ!あそこの彫像は珍しい!世に二つとないでしょうなぁ~!」
弟がまたかと溜息をついた。
兄は骨董品や珍しい物が大好きなのだ。
珍しい物をみると鑑定せずにはいられないだろう。
「なんなら差し上げよう。そこの木を切った時に削った物だ。世に二つとないだろう。」
落ち着いた声がドア付近から聞こえた時、初めて彼の存在に気づいた。
真黒な髪に真白な肌、真紅の瞳にこれも真黒な衣装。
あまりの美しさに、二人とも一瞬言葉を失くした。
「処女の血に三日三晩寝かせたんだ。きっと甘美な夢がみられる。」
「い、いえ。遠慮しておきます。失礼致しました。私、ピエロと申します。そしてこれがシェイド。突然の訪問お許し下さい。」
「良い。座れ。あまり堅苦しいのは好まないのでな。私はセディアスだ。…用件を聞こうか。私で役に立つかはわからんが…」
「僕の…僕のお友達が此処に来てないかと思って…!」
口数の少なかったシェイドが口を開いた。
こう真面目に他人にあった事がないのだ。
同じところにいる者以外は全て男娼時代の客。
事が済んだらあとは消えていた。