-三日月の雫-
歪愛
「……何のつもり?」
俺の十八回目の誕生日。
雫希を貰いに行くと告げた日だ。
あの日以来、顔を合わせるのは初めてだ。
家に帰る為に学校を出た雫希を、宮越の家が用意した車に乗せた。
ずっと隣で何も言わずに流れる景色を見つめていた俺に、雫希の不機嫌な声が掛かる。
「……俺と初めて会った日のこと、覚えてる?」
「はっ?」
雫希の質問を無視し、視線もそのままに呟いた言葉は更に彼女を不快にさせていた。
そんなの想定内だ。
だって、俺たちは幼なじみだろ?
例え、
「俺は鮮明に覚えてるよ……父の命令で始まった幼なじみの関係」
「尊……?」
父からの命令で成り立ってたとしても、……気付けば俺にとっての掛け替えのない存在になってたんだから。