-三日月の雫-

「そんなのいらない……俺は、宮越の家の為に雫希を貰うっ」


「尊っ! ィヤッ!」



……愛してる。

心の底から湧き上がる一言が、どうしても言えなかった。



怖かった。
俺の「愛してる」が、雫希に届かないことが……。



雫希だけが俺の存在理由だから。




こんな形で雫希を手に入れたって、何にも満たされない。



いつだって……どんなに雫希が泣きじゃくってても、ずっと手を繋いで……涙が渇くまで隣に居た。



その俺が、雫希の身も心も泣きじゃくらせている……。



ずっと積み上げてきた全てを、壊していく。




声が掠れるまで泣いて、最後まで俺の名前を呼んだ体は疲れて小さな寝息を立て始めていた。



泣きながら寝たせいだろう……。


「……っく……っ」


寝息に混じって咽ぶ声が聞こえた。



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