-三日月の雫-
「……た、ける?」
雫希の瞳が薄く開いたかと思えば、細い腕にギュッと頭を抱かれていた。
ずっと震えていた雫希の素肌から、どんどん体温が伝わってくる。
「……もっと、泣いていいよ」
「っ!?」
「ずっと……ヘタクソな作り笑いで、隠してたんでしょ?」
どんなに心が曇ってても、笑顔を作るのは得意だった。
でも、そんな安い笑顔じゃ……雫希は騙せていなかったらしい。
今までこんなに泣いた記憶は無い。
それくらい涙は、後から後から雫希の胸を濡らしていった。
カッコ悪い……。
でも、雫希は何にも言わずにそのままで居てくれる。
「もう……明日からは泣かなくていいよ……。ずっと一緒に居るから」
こう言って笑った雫希は、十二年前に出逢ったとき初めて見せたまんまの笑顔をしていた。