-三日月の雫-

「お願いがあるんだ」

「……えっ?」


「クローゼットに服が入ってるから……それに着替えて」



何やら言いたげに俺を見る雫希に小さく笑い、制服に着替えた俺は扉を閉めた。





まさかあの服を、雫希に着て欲しいなんて……言えるとは思っていなかった。



初めて抱いた雫希は泣きながら震えていたけど、



初めて抱きしめられた雫希は温かくて、吐き出しても吐き出しても消えることの無かった黒いものを全部無くしてくれた。



俺はまた、雫希の傍に居ていいの?



これからも、雫希の涙を止めるのは俺でありたい。



雫希が俺の涙を止めてくれたように……。




しばらくして、



「……尊っ」

「入るよ?」



ドア越しに聞こえた雫希の声で、俺はおもむろにドアを開いた。

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