-三日月の雫-
「……小野寺 雫希は、宮越 尊を愛してます」
俺に一歩歩み寄った雫希が小さく囁き、パッと手のひらを差し出した。
そこに輝く二つの指輪。
「雫希……?」
「わたしが幸せにしてあげるっ」
こう言って、にっと笑った雫希を気付けば思い切り抱き締めていた。
「……バカ、変なこと言うなよ」
本当はこみ上げる嬉しさを抑えるので精一杯だった。
そんな精一杯が言わせた強がりは、
「変じゃないっ、言ったでしょ? ずっと一緒に居るって……」
こう言って俺に頬を寄せた雫希の言葉に遮られた。
「尊っ」
「えっ?」
身を離し、俺の左手を取った雫希がゆっくりと指輪を通していく。
「お誕生日、おめでとうっ」
尊が居てくれて良かった。
そう続けられた雫希の言葉に、胸がグッと熱くなっていく。
俺は……雫希に必要とされている。
雫希が、俺を必要としてくれている。