-三日月の雫-
それから先のことはあまりよく覚えていない。


真っ暗な部屋でベッドに伏せた視界の片隅に、窓の外に見える雫希の部屋が映った。



他の家々からは明かりが漏れているのに、雫希の部屋も俺の部屋と同じように真っ暗だった。



雫希もきっと、病室の外で偶然聞いてしまった跡継ぎの話で動揺してるんだろう。



「……俺も、同じだ」



俺も雫希も今、酷く暗い闇に独りぼっちで居る。



小さく呟いた震えた声は、その暗闇の中に消えていく。



雫希。


俺も同じ……孤独の闇の中だ。


< 7 / 22 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop