お題小説
「泣けよ」
誰かの手が私の頭をクシャリと撫でた
「…泣けないよ。だって……」
何か生温かいものが私の唇に触れた
「そんなこと。そんな顔したってアイツは喜ばない」
歯がぶつかったのか、唇をかんだのかよくわからないが
口の中に広がった鉄分の味
そして感じた体温
彼はもうここにはいない
「つ……なんでっ?」
もう一度冷たい彼の唇に触れると
止まることのない
止め方を知らない
何かが
溢れだした