Tales of Love
「先生、三年生B組全員います」

「よし、三年はこれで全員か。一年生も全員だな。二年生は?」

「大変です、C組の小野が一人だけいないようです。」

「何ですって!?」

『美里がいない!?』

テルは自分の耳を疑った。
「どうします?もう火が全体に燃え移ってますよ、早くしないと」

「ですが我々だけでは…」

「道が渋滞で消防車が来るまで最低でもあと20分はかかるみたいですし…」

『あの校舎に20分もいればまず助からない。なんで先生質は助けに行かないんだ?こうしてる間にも美里は苦しんでるのに…』

テルの心の中である決意が固まった。近くにあった水道の水を頭からかぶるとテルは火が燃え立つ四部高とゆっくりと歩き始めた。

「…テル?」

「カズ…俺行くわ」

「そうか…がんばれよ」

「ああ」

カズはそれ以上は何も言わなかった。言葉はなくても二人は通じ合っているから、テルがどうしようとしているのか、誰の為に行くのかわかっていたから。

「大森、どこへ行く!?」

「先生、俺は行かなくちゃならないんだ!」

「だめだ、今行くとお前まで」

「こうしている間にもあいつは苦しんでるんだ!俺は…あいつを助けたい!」

テルは先生の手を振りほどくと四部高へと入っていった。
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