Tales of Love
   -一年半前-

美里とテルは放課後のんびりと寄り道をしながら一緒に歩いていた。どこか店に行くわけでもなく、映画を見るわけでもなくただ二人一緒にいられるだけでお互い幸せだった。

「そしたら、カズのやつが見とれてるんだよ」

「それは京子ちゃんに報告だね」

「カズが言うには他の女をよく見るからこそ京子ちゃんが一層特別に感じるとか苦し紛れの言い訳かましてるけどな」

「京子ちゃんも大変だね」

「でもカズはなんだかんだ言っても京子ちゃんのことちゃんと一番に考えてるからな、京子ちゃんが愛想尽かさない限り大丈夫だろあの二人は…お!?」

「どうしたのテル君?」

「美里あれ見ろよ」

「あっ!桜だ!もう六月なのにまだ一本だけ咲いてるんだ」

テルは鞄に使い捨てカメラが入っていた事を思い出した。

「美里、写真撮ろうぜ、ほら桜の前に立って、俺が撮ってやるから」

「え〜テル君も一緒に写ろうよ〜」

「俺が入ったら撮る人いないだろ、ほら笑って!」

テルは後にこの写真が二人の運命を大きく左右するとは知らずシャッターを押した。

「今度は私が撮ってあげる!」

「俺はいいって」

「テル君だけ撮るなんてずるいよ!ほらフィルムもちょうどあと一枚だし!」

「しょうがねぇな…これでこの桜の事は忘れないな」

「うん、そうだね!」

「さ、そろそろ帰るか」

二人は手をつなぎ季節はずれの桜をあとにした…
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