ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
聞き覚えのある声。


ベッドから立ち上がり、仕切りのカーテンを開ける。


「先生いないよ」


「あ!」


俺を見た女は、目を丸くして素っ頓狂な声を上げた。


「や、山内!?」


「はい、山内です」


確かこの子は花梨の友達の……。


杏子……だったっけ。


「先生いないの!?

ど、どうしよう……」


「どうしたの?」


「いや、あのね……」


杏子はソファーに顔を向けた。


ソファーには真っ赤な顔した花梨が寝かされている。


「花梨、体育の授業中、走ってたら急に倒れちゃって……。

まあ……この子、運動音痴で体弱いから、よくあることなんだけど……」


杏子はフウとため息をついて、冷蔵庫から水を取り出した。


「多分ただの脱水症状だから、水飲ませて寝かせとけば大丈夫だと思うんだけどね」


ソファーの上で、荒く息をしている花梨に目を落とす。


こいつは……俺の行くところ行くところ、必ず現れるんだな。


 
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