ラヴシンドローム～意地悪なkiss～

　
俺が立ち上がろうとした、その時だった。


花梨が泣きながら俺の制服を掴んでいた。


「ちが……うの」


つっかえながら、かすれた声を出す花梨。


「ミナキく……にキスされるのが……嫌……なんじゃ、ないの……ッ」


花梨は目をゴシゴシこする。


でも涙は止まるどころか、ますます溢れていて……。


真っ赤な目が妙に可愛く見えた。


「ミナキくん……は……そういう、キスとか……色んな女の子に……してるのかなって思ったら……なんだか涙が出てきて……」


花梨が潤んだ赤い瞳で俺を見つめる。


「ミナキく……ごめ……んね……。

私……別れるなんて……やだあああ～……！」


花梨は堪えきれなかったのか、わんわんと泣きじゃくり始めた。


女に「別れたくない」って泣かれるのはウザくて嫌いだ。


……でも不思議なことに、なぜか今日はイライラしない。


むしろさっきまでのモヤモヤが一気に消えたみたいで……。


泣きじゃくる花梨が可愛くて仕方ない。