ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
「そろそろ帰るぞ」
ベッドに腰かけていたミナキくんが立ち上がった。
「え!?
もうそんな時間!?」
壁にかかっている時計に目を向けた。
短い針は5と6の間を指している。
「でも、私のカバン教室……」
「持ってきた」
ミナキくんは教室にあるはずの私のカバンを持っている。
「取ってきてくれたの……?」
「だって起きてからカバン取りに戻ったら時間かかるじゃん」
あ……確かに。
「ありがとう」
私がペコッとおじきをすると、ミナキくんは少しほっぺを赤くして髪をかきあげた。
「あ、そだ!
私、銀ちゃんに連絡しなきゃ!」
「銀ちゃん……?」
「うん!
あれ?
ミナキくん、銀ちゃんのこと知らない?」
「銀ちゃんって……銀爾?」
「そだよー」
私はポケットから携帯を取り出して、アドレス帳から銀ちゃんの電話番号を探した。
「私、毎日銀ちゃんと帰ってるんだ。
だから今日は一緒に帰れないって連絡しなきゃ。
ちょっと待っててね」
携帯に耳を当てて、コール音を聴く。
4回目のコール音が響いたところで、電話の奥から聞き慣れた低い声が聞こえた。