ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
甘い匂いがした。


「ぬ!?」


私はその匂いのする方に視線を向ける。


建ち並ぶ店の中に、“たいやき”と書かれた大きな看板を発見。


「たいやき……」


無意識のうちに口の中に溢れ出した唾をゴクッと呑んだ。


「……アレ食いたいの?」


ミナキくんが私の顔を覗き込んだ。


「え!?

ううん、別に……」


慌てて首を横に振った瞬間、私のお腹はグゥと音を立てた。


「あ……」


「……ぶはっ!」


私の顔が熱くなったのと、ミナキくんがゲラゲラと笑い出したのは同時だった。


なんか私、笑われてばっかり……。


「本当は食いたいんだろ?」


ミナキくんはポンと私の頭を撫でて、お店の方に歩き出した。


 
< 128 / 214 >

この作品をシェア

pagetop