ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
「いらっしゃい」
魚の形の鉄板に生地を流しながら、愛想のいいおばさんがカウンター越しに笑った。
ケースにズラッと並べられているたいやき。
めちゃくちゃおいしそう……!
「あんこか、カスタードクリームか……」
んーっ……悩む!
どっちも食べたいけど、私の今の所持金は150円。
1こ100円だから、両方は買えないなあ……。
しばらく悩んでから、私はおばさんに100円玉を渡した。
「あんこ1つ下さい!」
「はいよー」
うー……。
でもやっぱりカスタードクリームも捨てがたいなあ……。
あーあ……お金、もっと持ってきとけば良かった。
「はい、お待ちどお様」
おばさんが優しく笑いながら、私にたいやきを渡してくれた。
たいやきの優しい熱がじんわり手に伝わる。