ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
ゆっくり歩道を歩きながら、ミナキくんの隣でたいやきを頬張る。


「おいし?」


「うんっ!

おいしーっ!」


私が笑うと、ミナキくんもニコッと笑ってくれた。


たいやきをくわえているミナキくんの横顔を見て、胸がキュンと苦しくなる。


ミナキくんの隣で、ミナキくんと同じものを食べてるって思うと……なんだか嬉しい。


今日の私、おかしいなあ……。


「ていうかお前、食べるの早」


「へ?」


ミナキくんが私のたいやきを指差して笑った。


ミナキくんのたいやきはまだ半分以上残ってる。


一方、私のたいやきはあとひと口分くらいしか残ってない。


───……「お前食うの早すぎ、そして食いすぎ。

本当に女?」


昔、橋本くんに言われた言葉を思い出した。


胸がズキズキ痛みだす。


橋本くんのこと、大好きだったけど……。


橋本くんと食事するのは嫌いだった。


───……「少しは女らしく食えよな」


私はミナキくんにぺこりと頭を下げた。


「ごめんなさい」


やっぱりミナキくんも大食いな女は嫌いだよね……。


嫌われちゃったかな……?


 
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