ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
クスクスと笑っているミナキくんに、気になっていたことを言ってみた。


「ミナキくんってさ」


「ん?」


「口悪いんだね」


ミナキくんはキョトンと目を丸くした。


そして、一瞬だけ眉をひそめた。


でもすぐにいつもの涼しい顔に戻って、突き放すような目を私に向ける。


「なに?

口の悪い俺は嫌い?」


「え?」


「お前も“優しいミナキくん”がいいわけ?」


するとミナキくんがあからさまに不自然な笑顔を浮かべた。


「ならいいよ。

花梨ちゃんにも、他の女の子と“同じように”優しく接してあげる」


私は慌てて首を横に振った。


「なら口悪いとか言うんじゃねーよ。

次また生意気言ったら、その口塞ぐ」


やっぱり口悪ーい……。


でも……。


「なにニヤニヤしてるわけ?」


「ンー?

だって嬉しいんだもん!」


「は?」


「だって、私だけ特別なんでしょ?

私にだけ、ミナキくんそういう風に話してくれるんでしょ?

私、優しいミナキくんより、意地悪なミナキくんのほうが好きだよー」


嬉しいの。


他の女の子には見せない素顔を見せてもらってる気がして……。


作られた優しいミナキくんなんていらないよ。


意地悪なミナキくんが本当のミナキくんなら、私はそっちのミナキくんの方がいいもん!


他の女の子には見せない顔、私にだけ見せて欲しいんだ。


 
< 133 / 214 >

この作品をシェア

pagetop