ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
散々弟に文句を言われながら、洗面所を独占して髪を整える。


シャワーを浴びたおかげで、いつもより髪が柔らかい。


身仕度を終えて腕時計に目を落とすと、短い針はまだ9と10の間を指していた。


「行くか」


俺は鞄に財布と携帯を突っ込んで家を出た。


いつもの道が、いつもと違う道に感じられる。


日曜日の朝って、意外に静かなんだな。


俺はぐっと背伸びして、長く息を吐いた。


休日に早起きしたのなんて、小学生のラジオ体操以来かも。


花梨の笑顔を思い出すと、自然と早足になった。


……俺、馬鹿じゃねーの。


花梨のこと、マジになってる……?


いや、まさか。


そう思うのに、さっきから考えてんのは花梨のことばっかりなんだ。


 
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