ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
あ……。
「おいしい」
「ほんと!?」
無意識に言葉がこぼれていた。
お世辞でも冗談でもなく、本当においしかった。
普通のおにぎりなのに。
見た目だけで言ったら、それこそ中の下なのに。
「ねぇ、もっと食べてみて!」
花梨に急かされて食べ進めると……。
「……なんで」
思わず笑ってしまった。
だって、おにぎりの中から唐揚げが出てきたから。
「サプライズッ!
その唐揚げも私が作ったんだよ!」
せっかく作った唐揚げを、なんでわざわざおにぎりの中に入れたんだろう。
そんな疑問が頭によぎる……けど、考えちゃいけない。
だって花梨だから。
花梨を理解しようとするなんて、そんなの無謀だし。
「おいしいよ、すごく」
俺がニコッと笑うと、花梨はすごく嬉しそうにはにかんだ。
おにぎりを食べ始めた花梨を見つめながら、長い息を吐く。