ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
女の人はもう一度私をギロッと睨み付けて、足早に人混みの中に消えていった。
ミナキくんは長いため息をついて、女の人を掴んだ手をズボンで拭っていた。
「ったく……うぜえったらありゃしねえな」
ミナキくんはそう小さく囁いてから、私に振り返った。
「ごめん。
嫌な思いさせて」
優しく微笑みを浮かべて振り返ったミナキくんは、ハッと目を見開く。
「……花梨……」
ミナキくんがギュッと私を抱き締めた。
「泣かせて……ごめん」
街中だってことを忘れて、私はミナキくんにしがみついて小さく泣いた。