ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
「そうだっ!

花梨ちゃん、もし良かったら晩ご飯食べていかない!?

今日は私がご飯作ろうと思ってたの!」


「え゙!?」


思わず声が出る。


それは、ダメだ。


絶ッ対ダメだ。


言っちゃ悪いけど、母さんの作る料理は言葉じゃ言い表せないくらいマズイ。


だからいつも料理をするのは逢。


ていうか、うちでまともな料理作れんの逢だけだし……。


「なんで母さんが作るの?

いつも通り逢でいいじゃん」


「なによーぅ。

今日は早く会社から帰ってきたことだし、久しぶりに腕を振るおうと思ったんじゃなーい!

なに?

なにかママが作っちゃダメな理由でもあるのー?」


あります、山ほど。


「あのー……」


花梨がおずおずと口を開く。


「あら、なあに?」


「気持ちはすごく嬉しいんですけど……あの……」


花梨が申し訳なさそうに俯く。


「ほら、花梨もこう言ってるし。

俺らは外で食ってくるから、今日は晩飯パス」


俺がそう言うと、母さんは納得いかないと言わんばかりに花梨に迫った。


「花梨ちゃん、何か用事でもあるの?

それとも私の料理が食べたくないのかしら?」


「いえ!

そういうわけじゃないんです……!

ただ、私……すごく大食いで……いっぱい食べちゃうから……」


「あらやだ、なーんだそんなこと?

うふふ、大丈夫大丈夫♪

じゃあいっぱい作るから、いっぱいおかわりしてちょうだいね!」


「本当ですか!?

わあいっ!」




嘘だろ……。



 
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