ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
 
「なら早速支度するわ!

急いで作るから、服着て待っててね!」


母さんがニヤっと笑うと、花梨は顔を真っ赤にする。


俺がジトッと睨むと、母さんは「ああ」という風に頷いて、俺にそっと耳打ちをした。


「大丈夫よ。

アンタがトマト苦手なことバレないように、トマト料理は控えるから」


誰もそんなこと心配してねっつーの。


母さんはニコニコしながら足取り軽く部屋を出て行った。


「最悪」


思わず長くて大きなため息が漏れる。


「若くて美人なお母さんだね」


花梨はニコニコ笑いながらそんなことを言っている。


俺は脱いだばかりのシャツを着ながら花梨の頭を撫でた。


「逢だけならまだしも、母さんまでいたんじゃさすがに出来ないな……。

だから続きは延期」


俺がそう言うと、花梨は恥ずかしそうにコクリと頷いて乱れた服を直し始めた。


「ところで、さっきなんか言いかけてなかった?」


俺が尋ねると、花梨は何かを思い出したのか口を開いた。


「あ、うん!

“私、あ”のゲームやりたいなって」


そう言って、花梨は部屋の隅に置いてあったゲーム機を指差した。


想像していたセリフとあまりにかけ離れていて、思わず全身の力が抜ける。


 
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