ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
銀ちゃんが黙ったまま、深いため息をついた。
「……橋本、俺らもう帰るわ」
「え、もう!?
えーっ!
もっと話そうぜ?」
「また今度ゆっくりな」
銀ちゃんが私の腕を引っ張って立ち上がる。
「……花梨、行くぞ」
何も考えられなくなった頭に、銀ちゃんの手の温もりだけがじんわりと染み込んできた。
「花梨!」
私の名前を呼んだ橋本くんの声にゆっくり振り返る。
「またな!」
そう言って手を振ってくれた橋本くんを直視出来なかった。
大好きだった橋本くんの笑顔が、今はすごく恐ろしいもののように感じた。
「バイ、バイ……」
顔を合わせないようにして手を振るのが精一杯だった。