ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
銀爾があんまり真剣に睨んでくるから、思わず俺も睨み返した。
何か言いたげな表情の銀爾。
じっと俺の目を見据えている。
なんだ……?
「……お前じゃ橋本の代わりなんて無理だ」
「……あん?」
小さく開いた銀爾の口から、ボソッとこぼれた低い声。
橋本……?
橋本って誰?
「……意味分かんねーんだけど。
どういう意味?」
俺が尋ねると、銀爾はハッと口を押さえる。
そして、「なんでもない」とだけ言ってバツの悪そうな表情で俯いた。
「……とりあえず、花梨のこと泣かせんじゃねーぞ」
銀爾はそう言って俺を一瞬だけ鋭く睨むと、教室を出て行ってしまった。