ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
「ミナキ……くん」
草木の揺れる音に混じって聞こえた花梨の声は、今日の青空みたいに澄んでいた。
「ふ……。
なに泣いてんの」
「泣いてない、よ」
「嘘つき」
俺は親指で花梨の涙を拭った。
ほんのり桜色に染まった、白くてきめ細やかな頬に伝う涙の線。
……なんか、綺麗だな。
「あ、あの……ミナキくん、ごめんね……?」
上目遣いに俺を見上げる仕草が可愛い。
「何が?」
「私ね、今日は友達と校舎の横にある広場でお昼ご飯食べようって約束してたんだ。
それで、広場に行く途中に校舎裏通ったら、たまたまミナキくんがいて……。
本当に覗くつもりはなかったんだけど……あの、その、えっと……」
モゴモゴと言葉を濁して俯く花梨の頭をポンと撫でた。
「いいよ別に。
気にしてないから」
……別に謝ることでもないのに。
誰かに見られてるのはいつものことで……覗かれるのは慣れてるというか……。
「あ……うん、そっか。
なら良かった……かな」
俺から目を逸らし、少し寂しそうな表情をした花梨。
どうしたんだ……?