ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
「あ、そうだ」
夢中になって焼きそばパンを食べている花梨に、1つ気になっていたことを尋ねた。
「さっき先輩に焼きそばパンぶつけてたけど、あれ、わざと?」
花梨は一瞬キョトンと目を丸くしたが、すぐにブンブン首を横に振った。
「違うの!
あれは転んだ拍子にパンが飛んでいっちゃって……」
恥ずかしそうに俯く花梨の膝には、じんわりと血が滲んでいる。
俺の視線に気付いたのか、花梨は手で膝を覆う。
「あは、あははは……。
私どんくさいから……すぐ転んじゃうんだ!
もう本当にやんなっちゃう!
先輩にも怒られちゃうし……本当に……」
花梨が下を向いた。
「本当に……私の……バカ……」
花梨の細い声が風の音に静かに溶けて消える。
一瞬だけ、花梨は何かを思い出すような表情を浮かべた。