ラヴシンドローム~意地悪なkiss~
その時、俺の携帯が鳴った。
小さなディスプレイに表示されるのは女の名前。
花梨に許可も取らず、すぐに通話ボタンを押した。
「はい?
ああ、カナちゃん?
今?
うん、大丈夫だよ。
どうしたの?」
“今、大丈夫”ってあえて言ってみた。
少し花梨を突き放してやりたかった。
「今日の放課後?
うん、暇。
……分かった。
じゃあカナちゃんの家に行くから。
じゃーね」
携帯を閉じる。
花梨の様子をうかがう。
「……あは、ミナキくんってやっぱりモテるねー」
花梨は焼きそばパンをモグモグしながら笑った。
でも、目は笑ってない。
花梨は急いで口の中のパンを飲み込むと、残りのパンを俺に押し付けた。
「これ、もう食べれないからあげる!
私もう教室に戻るね!」
明らかに作り笑いを浮かべながら、花梨は忙しく立ち上がった。