愛され彼女
律の近くのパラソルの中に見覚えのある顔、
聞き覚えのある声――、
数人の女に混ざって、
そいつは笑ってパラソルの中で浮輪を膨らましていた。
心臓が狂ったように暴れだす。
『向井若葉です』
『和人、ばかだなあ』
『和人!一緒に遊ぼー!』
『和人……、あたしのこと忘れないでね』
俺は思いだしたくない過去に頭を抱えてその場にしゃがみこむ。
消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ
「律っっっっ!!」
俺はやっと口からでた言葉を愛しい人に向けるように発する。