Bloody Kiss
余程恢の牽制が怖かったのか、男は「ヒィッ」と青い顔をして手を離した。

恢の本気の威嚇は私も怖い。吸血鬼ということもあり、いくら恢の素性を知っていても、体が本能的に恐怖するのだ。

男の手が離れたことを確認した恢は私の腰に手を回したまま、まるでエスコートするようにテーブルの間を歩いていく。

何故か周りの視線が痛い気もするけど、ここは気にしないでおこう。

目的の場所に着き、足を止めて目の前のボードを見つめる。
このボードには狩人を管理している協会からの依頼書や報告書が掲示されている。依頼書にはバケモノの討伐依頼、報告書にはバケモノの目撃情報などが書かれている。
ざっと見た感じだと、この街の付近でバケモノが出没したという情報はない。

「やっぱりこの街もハズレだね」

「……」

同意を求めたけど、恢からの返答がない。

「恢?」

疑問に思って隣を見上げると、険しい表情を浮かべていた。



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