Bloody Kiss
腕を回し、男の手を捻るようにして放させる。

「邪魔しないで」

驚いている男にさらにたたみかける。

「一般人を守るのも狩人の仕事。死にたくないのなら大人しく建物の中に避難していなさい」

鋭く睨みつけ、警告する。

「……」

押し黙り複雑な表情をした男たちを一瞥し、再び出入口を目指し歩き出す。

出入口に着き、佇んでいた二人の男に目をやる。生気を失っている男の右半身に血が滴っている。
血の出所は首筋に出来た、獣の爪で引っ掻けられたような傷痕。どうやら咬まれた訳ではなさそうだ。でも首の動脈を切られているし、この出血ではもう手遅れだろう。
確認のために首筋に触れる。まだほんの少し温かみは残っているが、脈はない。

「残念だけど、この人はもう……」

そう告げると担いでいた男は崩れるように倒れ込み、床に膝をついた。

「……ガルドーが、やられるなんて……」

男が切なげに呟くと、周りで様子を見ていた屈強な男達が集まりだした。彼らは思い思いの慰めや励ましの言葉を掛けている。
それを見届け酒場を後にする。



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