Bloody Kiss
酒場を出て周囲を見渡す。目の前は広場になっていて、その奥に森がある。
その時、ドスンという音と地響きがして、その音がしたであろう場所から鳥が飛び立った。

「あそこね」

鳥が飛び出したところに恢がいると思う。あの音は恢とバケモノが衝突した音で地響きはその衝撃だろう。
私はそこを目指し走り出した。



「このあたりの、筈なんだけど……」

走って乱れた息を整えながら、周りに恢やバケモノの姿がないか探す。

「……キミハ、美味シソウダ」

不意に耳元で声が聞こえた。咄嗟に銃に手を伸ばし、背後の声の主から距離を取るように前へ飛び、振り返る。それと同時に銃を構える。

「クククッ。イイネェ、ソノ反応」

声の主はとても愉快そうな表情をしていた。

コレは、何?

人間ではない。

吸血鬼でもない。

私の知っているバケモノとも違う。

私の目の前にいるモノはヒトの形をしていた。でも直立はしていない。深く腰を落とした前傾姿勢で、両手はダラリと垂れ下がっている。全体的に筋肉が盛り上がっているように見えるが、肉の付き方が不自然だ。
そして口が大きく裂け、牙が剥き出しになっている。

「イイネェ、ソノ顔。最高ニソソラレルゼ」

ソレは異常に裂けた口元を歪めて楽しそうな声を発する。

バンッ!

指が震え、暴発させてしまった。
銃から飛び出した銀の弾丸はソレに掠りもせず、ソレの後ろの木に当たった。

ソレの口が更に歪む。
紅い眼が私を獲物として捕らえている。

得体の知れない恐怖から呼吸が乱れ、銃の標準が上手く定まらない。



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