Bloody Kiss
「アリア」
ベッドに腰掛けていたはずの恢の姿が目の前にあった。
恢の右手が流れるように動く。その手が頬に触れる間際ビクッと身体が反応した。
あの時、恢は私の頬に触れた。
そして首筋を撫で……。
牙を穿たれる痛みを思い出し俯いてギュッと目を瞑る。
「俺が怖いか?」
暗闇の中で恢の切なげな声が聞こえた。
そっと目を開けると、私に触れようとしていた右手は元の位置に戻り、拳を作っていた。
そのまま恢の顔を見上げると、哀しそうで辛そうな表情を浮かべていた。
「怖くない」と言えば恢は安心するのだろうか。でも、気休めの言葉なんて意味がない。
「……怖いよ。初めて会ったときからずっと」
「そうか」
いつもと同じ答えなのにいつもと同じ無表情じゃない。傷ついたような表情。こんな辛そうな声、聞きたくない。
「でも!」
恢の胸に飛び込み、そのままギュッと抱き締めた。
身体中が恐怖に震えている。その震えを捩じ伏せるように抱き締める腕に力を込めた。
「恢が優しいってこと、私はちゃんと知ってる」
服越しに伝わる冷たい体温。
微かに香る薔薇の匂い。
「アリア」
低い声で名を囁かれる。恢の腕が背中に回り、抱き締められた。
恢の腕の中は怖いのに安心する。
私の居場所はここなんだと思える。
ベッドに腰掛けていたはずの恢の姿が目の前にあった。
恢の右手が流れるように動く。その手が頬に触れる間際ビクッと身体が反応した。
あの時、恢は私の頬に触れた。
そして首筋を撫で……。
牙を穿たれる痛みを思い出し俯いてギュッと目を瞑る。
「俺が怖いか?」
暗闇の中で恢の切なげな声が聞こえた。
そっと目を開けると、私に触れようとしていた右手は元の位置に戻り、拳を作っていた。
そのまま恢の顔を見上げると、哀しそうで辛そうな表情を浮かべていた。
「怖くない」と言えば恢は安心するのだろうか。でも、気休めの言葉なんて意味がない。
「……怖いよ。初めて会ったときからずっと」
「そうか」
いつもと同じ答えなのにいつもと同じ無表情じゃない。傷ついたような表情。こんな辛そうな声、聞きたくない。
「でも!」
恢の胸に飛び込み、そのままギュッと抱き締めた。
身体中が恐怖に震えている。その震えを捩じ伏せるように抱き締める腕に力を込めた。
「恢が優しいってこと、私はちゃんと知ってる」
服越しに伝わる冷たい体温。
微かに香る薔薇の匂い。
「アリア」
低い声で名を囁かれる。恢の腕が背中に回り、抱き締められた。
恢の腕の中は怖いのに安心する。
私の居場所はここなんだと思える。