Bloody Kiss
「あの、ね」

黙ってしまった恢に思い切って話しかける。

「狩人に襲われた次の日、恢が私のことを『エリィ』って……」

それを聞いた瞬間恢の眉間に僅かにしわが寄る。

「あれは夢ではなかったのか」

「やっぱり寝ぼけてたの?」

「寝ぼけてたと言うか、記憶が混濁していた。俺を心配する奴なんてエリィしかいなかったからな」

エリィについて語る優しい表情にモヤモヤとした感情が募っていく。

恢にこんな顔させるなんて、それだけ特別な存在なんだね。
私もそういう存在になれたらいいのに。

「アリア?」

「えっ?」

気付くと恢に見つめられていた。

「俺は他にも何かしたのか?」

予想外の質問に目をぱちくりとさせる。

「してないよ。エリィって呼ばれただけ。何でそんなこと聞くの?」

「お前が深刻そうな顔してたから、何かまずいことでもしたのかと思った」

恢は安心したようにふっと息を吐いた。
心配してくれたことがちょっと嬉しい。思わず緩んでしまいそうな頬を慌てて叩く。

私の奇行を恢は不思議そうに見ていたけど笑ってごまかした。

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