Bloody Kiss
「なんか冷えてきたな」

何時間書庫にいたのかはわからないけど、肌寒くなってきたから部屋へ戻ることにした。戻る前に部屋で読む用に吸血鬼関連の本や武術関連の本など数冊ピックアップする。

「あれ、もう夕方?」

書庫を出ると日が暮れ始めていた。
いくら朝食を摂るのが遅かったとはいえ昼食を摂り損ねるなんて……。
自覚した途端に空腹を訴える身体に苦笑しながら部屋へ向かった。



部屋に本を置いてからキッチンへ向かう。
廊下を歩いていると玄関の方から物音がした。恢が帰ってきたのかもしれない。
確かめるために玄関を覗いてみた。

そこには予想通り恢がいた。買い物をして来たのか大量の紙袋が無造作に置いてある。

「お帰り」

「あぁ」

近くにあった紙袋の中身を覗いてみると、中にはリンゴやバナナといった果物類が入っていた。他の袋からは飲み物の容器が見えていた。

「買い物行ってきてくれたんだね。ありがとう」

「あぁ。あとこれ」

恢はおもむろに袋の一つを差し出した。

「……何?」

中には服が数着入っていた。
どう見ても女物で恢の物ではない。プレゼントってことだろうか。
疑問に思っていると恢が口を開いた。

「この前は悪かったな」

この前?
たぶん血を吸われたあの日のことだよね。確かに服に血は付いてたけど、それ以前に泥汚れや擦り傷でボロボロだった。恢が気にすることないのに。

「ありがとう。大切に着るね」

弁償としてだけど、恢が物をくれるなんてもしかしたら初めてかもしれない。何より、私のために買ってきてくれた服。嬉しくて顔が緩んでしまう。それを隠すために俯いて抱えていた袋をぎゅーっと抱き締めた。

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