Bloody Kiss
「もう、会わないつもりなのかと思った」

袋を抱き締めたまま、本音を溢した。

このまま本音を隠して、今まで通り振る舞うこともできる。でも、向き合うって決めたから。本音でぶつかって、本音を聞き出す。はぐらかされたって何度でも問い詰める。拒絶されたらって思うと怖いけど、恢の味方でいるために出来ることは何だってやる。

本当の恢を知りたい。

俯いたまま恢の言葉を待った。

「……会わない方がお前のためになると思った」

そんなことない!って言おうと思ってバッと顔を上げる。でも恢の顔を見たら、何も言えなくなった。

「けど、無理みたいだ」

自嘲するみたいな苦渋の表情。

「恢……」

無意識に手が伸びて、恢の冷たい頬に触れた。

「隣にお前がいることに慣れてしまった。今更手放せない」

頬に触れている私の手に恢の手が重なる。

嘘みたい。
『手放せない』って……。
恢が私を必要としてくれてるってことだよね?
自惚れていいの?期待していいの?
恢の特別になれたって、思っていいの……?

赤黒い瞳と視線がぶつかってそのまま目線を逸らせなくなる。

不意に重なっている恢の手が私の手を握り締めた。

「っ!!」

それが引き金になって一気に我に返る。

急に恥ずかしくなってバッと手を引っ込めて下を向いた。
顔に熱が集中するのがわかる。恐らく今顔が真っ赤になっているはずだ。

「に、荷物運んじゃうね」

機微を見破れる恢には無駄だとわかっているけど、動揺を悟られないように逃げる方法を捻り出した。
身近にあった紙袋に手を伸ばすと横から伸びてきた手にそれを奪われた。

「重いものは俺が運ぶから、お前はこっち」

長いパンがはみ出している袋が目の前に現れて、それを受けっとった。中身はパンやシリアルなどで重さは然程感じない。
その袋を抱えたまま、先にキッチンへと消えた恢の後を追った。

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