拝啓、ばあちゃん【短編】
そう思ってからは、あっという間だった。


最初のうちは何をする訳でもなく、家に閉じこもってテレビを見たり、漫画を読んだりして過ごした。


そのうち暇になった俺は、ばあちゃんの所へ遊びに行くようになった。


母親がいなくなってからは、ばあちゃんに遊んでもらい、飯を食わしてもらい、俺はばあちゃんに育てられた。


俺は、ばあちゃん子だったんだ。


ただ、ばあちゃんは親父の兄夫婦と一緒に住んでいて、この家族を俺は好きになれなかった。


親父をもっとくそ真面目にしたようなおじさんに、口うるさい派手なおばさん。


俺のいとこに当たる、一つ上の秀一に、一つ下の真実は、地元でも有名なエスカレーター式の私立の進学校に通っていた。


親父はと言えば、学校に行かなくなった俺に、何も言わなかった。


言わなかったのでなく、言えなかったのかも知れない。


今だから分かるけれど、親父は人にあれこれ言うのが、とても苦手な人だった。


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