拝啓、ばあちゃん【短編】
おばさんに、言わされてるんだ。


ばあちゃんだけは、俺をわかってくれる。


もちろんそれは俺の勝手な思い込みで、ばあちゃんも俺が学校に行く事を、望んでいただろうに。


「それとね…」


ばあちゃんは言いにくそうに、口をもごもごしている。


「もうね、ここへも来ないでちょうだい」


「はっ?」


顔をしかめる俺から目を反らしたばあちゃんは、ゆっくり言葉を選ぶように、その先を続けた。


「おばあちゃんね、最近体がしんどいの。だから病院に行ったり、ちょっとゆっくりしたいの…」


チクタクと時を刻む秒針の音が、やけに耳につく。


「ごめんね…」


消え入りそうな声で謝ったばあちゃんは、それ以上何も言わなかった。


俺はばあちゃんから床へと視線を移し、ギュッと右手を握りしめた。


ばあちゃんは本気なんだ。


おばさんに何を言われたかとか、ばあちゃんの本心はわからない。


ただ、隣で満足気に微笑むおばさんの顔にイラついた俺は、何も言わずに立ち上がり、その場を去った。


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