拝啓、ばあちゃん【短編】
あの頃、何も考えずにただ好きな事だけをして生活を送っていた俺が、久しぶりにばあちゃんと出会ったのは、およそ一年ぶりの、中学2年生の春だった。


桜が咲いている景色をぼんやりと眺めながら、ちょうど一年前の、あの日の事を思い出した俺は、わざわざ遠回りをして、ばあちゃんの家の近所にある煙草の自販機に向かった。


あれからばあちゃんは、何をして過ごしていたんだろう。


体調は良くなったんだろうか。


忘れかけていたばあちゃんへの思いが蘇る中、次の角を曲がれば、煙草の自販機に辿り着くという時だった。


向かいから乳母車を押しながら、よたよたと歩く老人の姿が見えた。


俺はハッと息を飲む。


何度も目を凝らして見てみる。


間違いなんかじゃない。


それは紛れもない、一年前の面影が少しあるような、けれど変わり果てた、ばあちゃんの姿だったから。


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